イギリスで何百年にもわたり大切に受け継がれてきた「フットパス(Footpath)」。
それは、大きな観光名所を急ぎ足で巡る旅ではなく、森や牧草地、農村のあぜ道など「地域のありのままの風景を五感で味わいながら歩く」という歩行文化です。
なぜイギリスでフットパスが生まれ、今も世界中の人々に愛されているのでしょうか?
その歴史と「歩く権利」の物語、代表的な人気エリア、そしてフットパス芦北の理念との深いつながりをご紹介します。
フットパスの起源と「歩く権利(Right to Roam)」
イギリスのフットパスの歴史は、中世の時代にまで遡ります。
もともとは、人々が教会へ礼拝に通う道、隣の村へ通う市場への道、水汲み場へ向かう道など、日々の暮らしの中で自然と踏み固められた「生活の小径」が原型でした。
市民が勝ち取った「歩く自由」
18世紀から19世紀の産業革命期、急速に都市化が進む中で、煙の立ち込める工場で働く労働者たちは「週末に自然の中を歩き、澄んだ空気を吸いたい」と願うようになりました。
しかし当時、地主階級による「囲い込み(エンクロージャー)」によって、かつて自由に歩けた田園や森が私有地として柵で囲われ、市民が締め出される事態が発生します。
これに対し、市民やハイカーたちは「先祖代々歩き継いできた生活の道を歩く権利を守ろう」と立ち上がり、大規模な抗議運動や法改正運動を展開しました。
その結果、イギリスでは「たとえ私有地(牧場や農場、貴族の領地)であっても、歴史ある小径は公共の歩道(パブリック・フットパス)として誰もが自由に歩く権利がある」という独自の法律と文化が確立されたのです。
現在、イギリス全土には網の目のように約22万キロメートル(地球約5周半!)ものフットパスが張り巡らされています。
イギリスでフットパスが愛される代表的な名所
イギリスには、フットパス愛好家が憧れる美しい地域が数多く存在します。
1. コッツウォルズ(Cotswolds)
蜂蜜色の石造りの家々が並ぶ可愛らしい村と、羊たちがのんびりと草を食むなだらかな丘陵地帯。私有地の牧草地を柵のゲート(キスポールやスタイル)を開けて通り抜ける、イギリス・フットパスの象徴的な風景が広がっています。
2. 湖水地方(Lake District)
ピーターラビットの舞台としても名高く、詩人ワーズワースが「神が創りたもうた最も美しい風景」と称賛した山と湖の国立公園。石積みの壁に沿って歩き、雄大な自然と文学の歴史に浸ることができます。
3. サウス・ダウンズ(South Downs)
イギリス海峡に面した白いチョーク(石灰岩)の断崖絶壁「セブン・シスターズ」と、吹き抜ける潮風。起伏に富んだ丘の上を歩きながら、どこまでも続く青い海を見下ろす絶景トレイルです。
「フットパス芦北」が受け継ぐイギリスの精神
フットパス芦北の代表・佐藤圭吾も、かつて本場イギリスのフットパスを旅し、その歩く文化の豊かさに深い感銘を受けました。
イギリスの人々は、道沿いに豪華なアミューズメント施設を造ることはしません。ありのままの自然を愛し、農作業をする人々と挨拶を交わし、歩き終えた後は村のパブで一杯の紅茶やビールを楽しみます。
「芦北にも、作られた観光地にはない素晴らしい海、みかん山、そして温かい人々の暮らしがある。このありのままの道を、地域の宝として未来へ残したい」
その想いが、フットパス芦北のすべての活動の原点となっています。
不知火海を見下ろすみかん畑の細道「ぎりぎりの小路」や、石積みの波多島港、コトコト走る肥薩おれんじ鉄道の線路沿いの小道。芦北のフットパスには、遠くイギリスから受け継がれた「暮らしの小径を愛する心」がそのまま息づいています。
本場イギリスの息づかいを感じる芦北の道を歩いてみませんか?
フットパス芦北が整備してきた全8コースは、日本全国の優れた小道を表彰する「第1回全国フットパスコンテスト」において、栄えある初代グランプリ(日本一)に輝きました。
イギリスの歩く哲学と、不知火海の豊かな風土が出会って生まれた芦北の小道を、ぜひゆっくりと体感してみてください。
設立の背景や理念については「フットパス芦北とは?」を、初代日本一コースをはじめとする全8コースの詳細は「全8コース完全ガイド」をご覧ください。

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